Euphorbia multifolia


ユーフォルビア、ユーフォルビア ムルチフォリア(Euphorbia multifolia)をご紹介します。

ムルチフォリアは南アフリカの西ケープ州にあるSwartbergという山近辺に生息しています。タイプ標本はLaingsburgからLadismithに向かって48kmの岩場の斜面で採取されました。

おおよその生息域
斜面は岩だらけのKlein Swartberg

道路横や標高の低い個体はほとんど採種されてしまったそうですが、アクセスすることすら難しい急な斜面や高標高の個体は現存しているようで、IUCNレッドリストでも懸念は低めにされています。

岩場の隙間に生えており、分岐を繰り返しながら、さながらクッションのような姿を形成します。
国内で流通するもののほとんどは挿し木株ですので、自生地の姿を見て驚かれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実生株は比較的株元で分岐をするようですので、長く栽培管理すれば自生地のような姿に近づけられるのではと期待しています。

岩場の隙間に張り付くように展開しています
実生株

幹から伸びる細長い葉と長い棘が特徴です。
学名がmulti(たくさんの) + folia(葉)と名付けられている通り、それぞれの幹から細長い葉をこれでもかと展開します。先端は矢じりのような特徴的な形をしています。(下写真参照)
もう1つの特徴である長い棘、実は花柄の残りで、開花後永続的に残ります。E.バリダと同じですね。

栽培で一番楽しめるのは上からの眺めでしょう。
葉は明るい緑色~青磁色をしており、特に極寒期を抜け、暖かい日がたまにやってくる2,3月、この時期の葉色は園芸的に「シルバー」と呼ばれるような冴えた色になります。またこの頃から花芽を上げ始めるので、様々な色が交じり合い、さながら花火のような姿を楽しむことができます。

雄花
雌花

雌雄異株のため採種するには、雌株・雄株を揃える必要があります。
前述の通り、2月~4月の春先に開花しますので、このタイミングで交配を行います。


【学名】
Euphorbia multifolia A.C.White, R.A.Dyer & B.Sloane, 1941

【記載情報】
記載者:Alain Campbell White, Robert Allen Dyer, Boyd Lincoln Sloane共著
原記載書籍:The Succulent Euphorbieae (Southern Africa) :271ページ、962ページ

【生息地】
南アフリカ 西ケープ州 Swartberg山周辺

【栽培環境】

自生地のやや東に位置するSwartberg峠の気候

自生地は最高気温は31℃、最低気温は-6℃、年間通して少量の雨が降るようです。
日本では冬に生育する種です。積雪や霜にも耐えうる丈夫さを持っています。
関東以南であれば冬季は露天で問題ないでしょう。
成長シーズンである10月~4月頃は水やりの頻度は多めにしてやると長い花柄を確保できます。しっかりと光を当て、通風を良くし、その上で水やりの頻度を上げてやると良いでしょう。
夏場はやや動きを鈍くさせますが、完全に落葉することは少ないです。完全に断水せず、月に1度は夕刻涼しくなってきた頃合いに少量の水やりをします。35℃以上の気温には特に注意します。風通しのよい半日陰等で管理をします。

【繁殖方法】
挿し木での繁殖が可能です。成長している枝を鋭利な刃物で切り取り、切り口を乾燥させてから用土に挿し、少量の水やりを継続します。
雌雄別株のため交配するにはそれぞれの株が必要です。極寒期を抜けた2~4月に開花します。採れた種は9月~10月頃に播くのがよいでしょう。


【Note】
近縁種にEuphorbia eustacei(ユーフォルビア ユースタセイ?)があります。
・ユースタセイは花柄がより硬く、白い棘のように残ります。
・ユースタセイの葉はムルチフォリアより短く、先端が丸まっています。
・蜜腺の色がムルチフォリアは緑色、ユースタセイは黄色。
・ユースタセイは苞葉がかなり小さいですが、ムルチフォリアはやや大きく土台となる総苞からはみ出る傾向にあります。
以上から見分けることが可能です。簡単に言えば、コンパクトで白棘のムルチフォリアがユースタセイなイメージです。

中々ユースタセイは流通していませんね。かくいう私も所有していませんので、挿し木等譲っていただける方いらっしゃましたら是非ご連絡くださいませ。

ムルチフォリアは本当に丈夫な種です。2021年1~2月は中々の寒さでしたが、露天で越冬しました。ほんの少しですが葉が痛んでしまったので(本当に少しだけ)、0℃を下回る日は軒下に移動させてやると綺麗な姿のまま越冬できると思います。

控え目なタイプ標本

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