Euphorbia globosa

球状の茎が連なる姿が独特なユーフォルビア グロボーサ(Euphorbia globosa)を紹介します。
「玉鱗宝(たまりんぽう)」という和名が与えられています。

グロボーサは1820年にJames Bowie氏により初めてイギリスに持ち込まれたと推測されています。Adrian Hardy Haworthは1823年に「指のような花」を意味するDactylanthes属として分類しましたが、 その後John Sims氏が1826年「Rounded-Jointed Spurge」(球が連なるユーフォルビアの意)として現在のEuphorbia globosaを記載しました。

その学名の通り球状の枝が連なる不思議な見た目をしています。古い枝は木質化しますが、そこからどんどん枝を伸ばすので、時間が経つとゴロゴロとした面白い見た目になります。自生地では半分地面に埋まるようにして生息しており、大きい株は20-30㎝の幅にまで広がっているそうです。

Curtis’s Botanical Magazine挿絵
タイプ標本

グロボーサはとても不思議なサイアチアを持ちます。 Haworth氏が「指のような」と表現したように尖がった蜜線が付いています。明るい緑色のベースに、白い輪のような模様が描かれています。鳥の足のようにも見えますね。

またグロボーサの特徴として、同じ個体でも花柄が長かったり短かったりします。タイプ標本にも長短の花柄が見て取れますね。これは環境の影響ではなく、グロボーサの気まぐれとしか言えません。
また面白いことに、栽培環境下では花柄の先にサイアチアではなく、球枝を付けることもあるようで、枝が大きくなると地面に垂れ下がり、そこから根を下ろし新たな株として成長するとのこと。

花柄の長短について「absurdly long(ばかげた・不合理な長さ)」とまで書いている書籍もあり、この花柄の長短や栽培環境下では貪欲増えようとする姿が、なんだかいい加減な印象をもたらしている気がします。
ただ、自生地では個体数がかなり減少しているようです。


【学名】
Euphorbia globosa Sims, Bot. Mag. 53: t. 2624 (1826)
【記載情報】
記載者:John Sims
原記載書籍:Curtis’s Botanical Magazine
(The Botanical magazine, or, Flower-garden displayed)
Volume:53 (1826年) 2624項
【生息地】
南アフリカ 東ケープ州 Port ElizabethからUitenhageにかけて
海岸線から20㎞以内
【栽培環境】
自生地は年間通して少量の雨が降り、気温の変動も大きくありません。
暑めの月 :平均最高気温 25℃ 平均最低気温 18℃ 月間降雨量40mmほど
涼しめの月:平均最高気温 20℃ 平均最低気温 9℃ 月間降雨量45mmほど
快適な気候のように見えますが、最高気温は41℃、最低気温は-1℃の記録があります。(Port Elizabethのデータ)
以上のようなデータの通り、暑さ・寒さに強く、場所によっては通年屋外管理が可能です。
夏場は夕方~夜の水やり等で、蒸れに気を付け、冬場は霜が降りないよう軒下や北風が吹きこまない場所で管理するのが良いでしょう。霜耐性はあるようなので、少しのマイナス温度ならチャレンジしてもいいかもしれません。

Port Elizabethは「Windy City」の異名をもち、風が強く吹いています。
またグロボーサが生息しているようなところは太陽を遮るものがありません。
温度以上に通風や光に注意して管理すると本来の姿を維持できるかもしれません。

【繁殖方法】
挿し木が容易にできます。一番簡単な方法は、地面に近い玉は根を下ろすので、その玉を切り取れば発根作業もなく株分けすることが出来ます。
また根を下ろしていない玉であっても挿し木は容易です。よく研いだ刃物で動きのある玉をカットし、すぐに土に挿します。切り口を乾燥させる必要はありません。植え込み後はしっかりと水やりを行います。その後は土が乾燥したら少量の水やり継続します。
グロボーサは雌雄同株で、自家受粉が可能です。実生株がもっと流通してもいいような気がしますが、あまりに挿し木が簡単なせいかあまり見かけません。


【Note】
近縁種にユーフォルビア トリデンタータ(Euphorbia tridentata)があります。
・トリデンタータの方が枝が棒状に伸びる。
・トリデンタータは地面に枝を下ろさない。
・トリデンタータの花柄は常にとても短い。
以上の3点より見分けることが可能です。自生地での姿はかなり似通っていて、花柄の長さが見分けるキーとなりそうです。

球のように枝を作るのは至難の業です。
強光下でも耐えれるようしっかりと根を作り、なるべく日照時間を長くとる、表情を見ながら水やり…
伸びてしまった枝はカットでやり直せるのが唯一の救いでしょうか。
自生地では地面を這うように球体が連なっています。自生地の厳しい環境がそうさせるのか、あるいはどんどん潜り込むことでそのように見えているのか、いずれにしても栽培で自生地のような姿を保つのは困難を極めます。

実生株は立派な塊根を形成します。

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