「ユーフォルビア ホリダ」の分類について
「ホリダ」は日本国内ではサボテンの傍らで栽培されていたことが多く、これまでに様々な交配種が作出されてきました。こうした”日本の園芸”的な側面ももちろん素晴らしいのですが、今回は原種にスポットを当ててみましょう。
学名について
「Euphorbia horrida」という学名は現在有効ではありません。2012年にEuphorbia polygonaに統合されました。
これは、E. polygonaとE. horridaが同種であるとみなされ、E. polygonaが1803年、E. horridaが1860年に記載されたため、先に記載された名前を優先するという規則に則ったからです。2012年以降は、変種を認めるか、あるいはすべてをまとめてE. polygona1種として扱うかで意見が分かれていますが、いずれにせよE. horridaという学名が今後復活する可能性は低いでしょう。
なおtresでは、原種ではないものについては「Euphorbia ‘ホリダ’」というようにクオーテーションで囲み、日本語で品種名を書くことで区別しております。
12の変種
E.polygona1種とまとめる教授もいらっしゃいますが、var.anopliaやvar.exilisなどを見ると個人的には変種を認める分類を支持したくなってしまいます。以後この分類を前提に進めてまいります。
現在基本種のvar.polygonaも含めると12種の変種が記載されています。
- Euphorbia polygona var. alba
- Euphorbia polygona var. ambigua
- Euphorbia polygona var. anoplia
- Euphorbia polygona var. exilis
- Euphorbia polygona var. hebdomadalis
- Euphorbia polygona var. horrida
- Euphorbia polygona var. major
- Euphorbia polygona var. minor
- Euphorbia polygona var. nivea
- Euphorbia polygona var. noorsveldensis
- Euphorbia polygona var. polygona
- Euphorbia polygona var. striata
掲載している写真は、すべて私所有の株を撮影したものです(var.striata除く)。フィールドナンバーの“J&R”はJaap Keijzer氏とRikus van Veldhuisen氏が採取したもので、“GM”はGerhard Marx氏、そして“DHS”は後述するDetlef H. Schnabel氏が採取した株を指します。 Detlef H. Schnabel氏の文献が現行の変種分類の由来となっているため、DHSナンバーは確実にこの変種だと断言できる貴重なナンバーです。
Euphorbia polygona 亜種確認チャート
※植物体が成熟していない場合は完全に同定できない場合があります。(例:幹の太さなど)
1 . 蜜腺基部の色が赤色〜紫色…2
1*. 蜜腺基部の色が黄緑色〜緑色…8
2 . 幹に白い粉状のワックスが付着している…3
2*. 幹に白い粉状のワックスが付着していない…4
3 . 成熟株の幹の太さは最大100mmほど、稜の深さが16mmほど… E.polygona var. nivea
3*. 成熟株の幹の太さは最大250mmほど、稜の深さが30mmほど… E.polygona var. ambigua
4 . 幹に花梗が発生しない、あるいは非常に稀… E.polygona var. anoplia
4*. 幹に花梗が発生する…5
5 . 稜の側面に灰緑色の縞模様がはっきりと入る… E.polygona var. striata
5*. 稜の側面に縞模様はない…6
6 . 花梗が比較的長く、最大40mmほどになる… E.polygona var. noorsveldensis
6*. 花梗が比較的短く、4〜15mmほど…7
7 . 稜数が多く、最大20稜になり、幹の太さは最大100mmほど… E.polygona var. polygona
7*. 稜数が少なく、最大でも10稜ほど、幹も細く最大40mmほど… E.polygona var. exilis
8 . 成長しても幹高は最大250mmほどにしかならない… E.polygona var. minor
8*. 成長すると幹高が500mmを超える…9
9 . 幹高が600mmほどの中型で、幹に白い粉状のワックスが付着している… E.polygona var. alba
9*. 成長すると最大で幹高1.6mに達する大型で、幹に白い粉状のワックスが付着しているものの明瞭ではない…10
10 . 幹の太さは最大150mmほどで、幹高は最大1mほど… E.polygona var. horrida
10*. 幹の太さは最大300mmほどになり、幹高は1.4m〜1.6mに達する…11
11 . 幹高は最大1.6m、花梗の長さは45mmほどで、各稜が広く離れ、稜間の溝は幅45mmほど… E.polygona var. major
11*. 幹高は最大1.4m、花梗の長さは30mmほどで、各稜はやや狭く離れ、稜間の溝は幅30mmほど… E.polygona var. hebdomadalis
Reference: Schnabel, D. H. (2023). Euphorbia World 18(2): 50-55
※”A Moograph of Euphorbia polygona(2022)”からvar.hebdomadalisの定義が修正されています。
現状では日本で流通しているE.polygonaは交雑しているものがほとんどですので、上記チャートに当てはまらないものが多いかと思います。輸入株由来だと確信できるものについては、このチャートでどの変種になるか確認してみるのも面白いかもしれませんね。
Detlef H. Schnabel氏
本稿で説明した分類は、Detlef H. Schnabel氏の文献に依拠しています。
Detlef H. Schnabel 氏
International Euphorbia Society 南アフリカ・ドイツ・オーストリア代表。南アフリカの多肉植物、特にユーフォルビアを愛好しており、Euphorbia polygonaについて体系的にまとめた書籍も発刊されています。
NHK「滝藤賢一が行く!南アフリカ珍奇植物紀行」にも出演されていたので、日本の愛好家にも馴染みのある方かもしれません。(滝藤さんとハオルチアを探されていた方です。)
https://www.euphorbia-polygona.de/
彼のホームページでは、12の変種全ての自生地での姿を見ることが出来ます。(必見!)
また、彼が発刊されている書籍には200を超えるE.polygonaの写真がフルカラーで掲載されており、愛好家必携の書となっております。日本への発送もされていますので、気になる方は彼に直接メールをしてみてください。英語が苦手だよ、という方がいらっしゃれば私にメール、InstagramのDMを頂ければ仲介することが可能です。
原種の魅力や多様な変種の世界を知りながら、E.polygonaを楽しみましょう!
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